日本語というのは便利な言葉で、主語や目的語が代名詞(またはそれに相当する場合)の場合は省略することができます。
A:「今日、飲み会行く?」(@)
B:「行くよ」(A)
A:「子供連れてくの?」(B)
B:「連れて行かない」(C)
という会話は、別に不思議でも何でもありませんが、@とBの発言には「あなたは」という主語が、Aには「私は」という主語が、Cにいたっては、「私は」という主語と、「子供を(彼(ら)を)」という目的語が省略されています。
普通でしょ?と思うかもしれませんが、これが英語となると、そういうわけにはいきません。
英語は、「主語も目的語もきちんと言語化されなければいけない」という大原則があります(口語では例外もありますが)。
しかも、面倒なことに、性別のわからないある特定の人物をさす場合に使える中性的な代名詞の単数形がないのです。
むずかしい言い方をしましたが、要するに、男か女かわからない1人の人間を表現する代名詞がないということです。itじゃちょっとヒドイもんね。
具体的には、
「彼はいつも、本人がいないところで陰口を言う」
という日本語を英訳する場合、
"He always speaks ill of someone when ___ is not there."
となります。
___部分に入る代名詞は"someone"が男性であれば"he"、女性であれば"she"となるはずですが、どちらかわからないときは何を使えばよいのか困ってしまいます。
"someone"を入れりゃいいじゃん、と言われそうですが、英語では「既出の名詞が直前にあるときは、代名詞を使う」ことが通常ですので、ここで"someone"を入れるのはイマイチです(文法的に間違ってるわけじゃないけど)。
さて、代名詞としては何を使いましょうか。
私が大学生のときに提出したレポートでは、たいてい"he or she"を使っていましたが、最近"Singular they"というものがあるということを学びました。
"singular"とは、「単数形の」という意味です。つまり、"Singular they"とは、単数形扱いの"they"。
"they"は本来2人(つ)以上を指す複数形ですが、これを「性のわからない単数形のものの代名詞」として使える、ということです。
先ほどの例文でいうと、___部分にtheyを入れて
"He always speaks ill of someone when they are not there."
となるわけです。便利!
ところで、この"Singular they"、その実態は単数(="someone")であるものの形態は複数形。
ですから、上記の"they"の後にくるbe動詞は"is"ではなく"are"となります。
wikipediaでもこの件について解説していますので、興味のある方はぜひ。ただし、今のところ日本語化されておらず、言語学の専門用語なんかもごちゃごちゃ出てきていますので、ちょっと難しいかもです…。
URL:http://en.wikipedia.org/wiki/Singular_they