2005年10月25日

映画レビュー:『霧の中の風景』

今日はひとつ授業が休講になったので、久々に学校のAudio Videoライブラリーに行ってきました。

本日のチョイスはコレ、『霧の中の風景』。1988年作(日本公開は1990年)の、フランス・ギリシャ共同制作作品。監督はギリシャのテオ・アンゲロプロスさん。

 ストーリーは、幼い姉弟が父親を探すためにギリシャからドイツに旅をするっていう、ただそれだけの話。それだけなんだけど、明るくて太陽の光まぶしいギリシャのイメージからは程遠く、とにかく陰鬱でどんよりとした天気(たぶん冬だからだろうけど)のもと、二人の冒険も静かに、淡々と、でもなんとなく暗いまま進んでいく、そんな感じでした。

インターネットで映画のレビューを見ると、けっこうみんな「痛切に美しい傑作!」とか「大絶賛!」とか書いてるんだけど、私にはどうも、この作品のよさっていうものがよく分からなかったようです(残念…)。なんていうか、つらさとか、苦しさとかを沈黙でしか表さない主人公の、その沈黙の時間っていうのがあまりにも暗くて、ねっとりとまとわりついてくる感じ。嫌悪感があるわけじゃないけど、なんかこう…絡みつくような陰鬱さがほんとうに、いろんな意味で印象的でした(この監督の作品って、どれもそんな感じらしい)。形容するなら「情叙的」「詩的」…かなぁ。「この映画に託されたメッセージは何だ?」っていう、その問いそのものが無駄なような気がする。メッセージとか、そういうんじゃなくて、ただこういう世界が存在して、こういう姉弟がいて、こういう風景がある。ほんとに、ただそれだけのことを、映像にして「映画」という世界に持ち込んだ、という感じかなぁ。うーん、うまく言えない。

生死を分かつような大きな事件とか、身の毛もよだつ恐怖とか、人生投げ出したいくらいの悲しみとか、そんなのがあるわけじゃなく、かといって幸せの絶頂でもなく…。ただ、歩き続ける。雨が降ろうが、雪になろうが、やさしくされようが、邪険に扱われようが、ただ生きていく。前に進んでいく。そういう映画。

でもなぜか、

雪に見とれる街の人々とか
一台のバイクに3人で乗って海を目指すところとか
霧の向こうの一本の木とか

そういうひとつひとつのシーンが心に残っちゃうんだなぁ。不思議と。


あんまりハッピーな内容の映画じゃないけれど、静かな、そして2時間しか見てないのに4時間も5時間も映画を見ていたような気分を味わいたい人は、見てみてください。ものすごく難しいメタファーを理解したいという哲学的な人には、ものすごく考えることがたくさんある映画だと思います(私はメタファーのほとんどが理解できませんでしたけど)。っていっても、超マイナーな映画なので普通のレンタルビデオ屋さんには置いてないかもね…。


でも、同じ「静かでしっとりとした時間」を感じるなら、やっぱり『阿弥陀堂だより』がオススメです。


posted by かずみ at 22:11| Comment(0) | TrackBack(1) | レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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「霧の中の風景」
Excerpt:  テオ・アンゲロプロス全集 I~IV DVD-BOX III 「霧の中の風景」 ★★★★ Topio Stin Omichli (1988年ギリシア・フランス) 監督:テオ・アンゲロプロ..
Weblog: NUMB
Tracked: 2005-11-19 23:00
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