800ページ超の"The Historian"―なかなか思ったよりも手ごわい相手でした。
感想としては、誰かがAmazonのレビューに書いているとおり、
Kostova might be a good historian, but she does not write a good novel.(コストヴァ(作者)は、歴史家としては非常に優れているけれど、小説家としての手腕は感じられない)
って感じでした…。確かに面白いんだけど、オチがないっていうか、最終章が投げやりな感じ。ドラキュラ伝説をここまで細部にわたって書きこんでいる割には、人間の心理描写が雑に思えました。むしろ、小説なんかにせずに『ドラキュラ伝説をめぐって』みたいなエッセーにしたほうが、そういうのが好きな人に受け入れられたとんじゃないかなぁ…。カラーで、写真いっぱい載せたりしたら、私ならゼッタイ買っちゃう(←ミーハー)。それが、残念ながら、なまじ小説にしてしまったばっかりに“歴史小説”としては中途半端になってしまってるかも。
でも、前回も書いたとおり、『世界!不思議発見』とかお好きな人にはオススメです。ドラキュラ伝説をめぐって、アムステルダムからトルコへ、トルコからルーマニア、ブルガリアへと、手がかりを追えば追うほど謎はどんどん深まっていく。古文書とか、私はそういうの大好きなので、「これは、古代教会スラブ語だ!」とか「アラビア語で書かれた文書だ!」とか「これはルーマニアの民謡だ!」いうセリフが出てくるたびにうきうきしてました。むしろその文章を載せてくれ!って感じでした(←マニア)。
題名が"The Historian"(歴史家)で、物語の半分以上が歴史にかかわることなのに(世界史得意だった人は、読んでて分かりやすかったかもね)、私がぐぐっとひきつけられたのは
Draculaは"son of the Dragon"(竜の息子)っていう意味だ。
(正しくは、Draclea = "son of Dracul"(ドラクルの息子)で、Draculっていうのはドラキュラのお父さんのお名前。んで、Draculはルーマニア語で竜とか、悪魔とかを意味するDracから来てるんだって。詳しくなっちゃった♪)
とか
Balkan(バルカン地方)はトルコ語で "mountains"(山地)っていう意味だ。
とか、そういう、言語に関わることばかりで…(しかも、なぜか修道院用語にまで詳しくなってしまった)。
オットーマンの支配がどうたらこうたらとか、きっと著者がもっとも書きたかったことに心惹かれなかったことについては、むしろ申し訳ないくらいです。
でも、単純な私は、読み終わって早速「ルーマニアのドラキュラ城に行きたい!」と思い始めました。Sighisoara …行ってみたい!
歴史好きで、詳細な記述に疲れない人には、オススメの一冊です。
地図と世界史の年表を片手に読むと、筆者の意図に添えると思います(^^)